研究概要 |
臨床解剖学的研究において,解剖実習体を用いて詳細な解剖を行い,尿道括約筋部への支配神経の分布パターンの解析を行った.横紋筋性尿道括約筋は陰部神経から,平滑筋性尿道括約筋は骨盤神経叢からの各枝によって支配されるとされている.しかし,これらは明確に分けられず,それらの走行中に神経枝の吻合が見られること,その神経は肛門挙筋を貫いて骨盤隔膜の内外の吻合を行うことがしばしばあることが見出された.また,骨盤内臓に分布する動脈配置について,とくに骨盤内筋膜との関係に注意を払いながらまとめた.その中で前立腺および膣への動脈が,骨盤内筋膜の影響を受けずに骨盤隔膜に沿って走り,それによって骨盤内動脈のネットワークを作り上げていることについて整理し,報告している. 発生学的研究においては,マウス胚(E11.5-13.5)を6時間ごとのステージで採取し,その矢状連続切片を作製することにより観察をおこなった.これにより,骨盤内筋膜の形成においてもっとも重要な区分といえる,尿生殖部と肛門部との境界の形成過程の観察をおこない,その過程でおこる骨盤内のapoptosisの分布を三次元立体構築などをおこない観察した.その結果,中隔と総排泄腔膜との癒合は見られないこと,総排泄腔の腹側部と背側部は発生経過中に交通があること,総排泄腔膜は1箇所にて開口することなどをあきらかにした.この開口をもたらす総排泄腔膜の崩壊の起こる部位は,単に,総排泄腔膜の最背側部であるというだけではなく,この部位が外生殖器の腹側方への発生・成長にともなっておこる総排泄腔背側部の腹側移動と関係が強いことが示唆された.また,間葉のアポトーシスの空間的時間的変化の観察により,総排泄腔の腹側移動・変形に間葉細胞のアポトーシスが密接に関与していることが示唆された.
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