研究概要 |
本研究は歯科鋳造用金属の口腔内での変色や腐食に関して臨床的見地から検討を行い,その原因の究明および防止を目的として行い,以下の結果を得た. 1.CH_3SHならびにH_2S産生量が,金銀パラジウム合金の変色と大きく関連していることをin vitroで検証した.金銀パラジウム合金の変色や腐食は,口臭や歯周疾患,口腔清掃状熊などめ総合的な口腔内環境と深い関わりがあることが判明した. 2.市販の金銀パラジウム合金の耐変色性は合金組成の影響を受けるが,口腔内の腐食性が高い患者では、いずれの組成の合金においても耐変色性が十分でなく,著しい変色を示すことが確認された. 3.口腔内における金銀パラジウム合金の腐食性が高い患者では,熱処理は必ずしも有効とは言えなかった. 4.変色した金銀パラジウム合金およびチタン試料の表面のSPM観察では,120〜1200nmの球状の付着物で覆われていた.純チタンでは変色層の厚さ0.2〜0.5μmと推定されたが,金銀パラジウム合金では変色層の厚さは推定できなかった. 5.金銀パラジウム合金を用いたクラスプの口腔内における装着時の電位は,-92〜51mV,平均-9.0±35.6mV,装着後1ヵ月後には,1装置を除きすべての装置の電位は正となり,3〜176mVを示した. 個々の口腔内環境を大きく変えることは難しく,また臨床的には変色防止のための金属材料側からの対策にも限りがある.現状では,口腔内で金銀パラジウム合金が変色する患者では,金合金やコバルトクロム金合などの金属の使用が望ましいと思われた.
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