研究概要 |
研究の目的 本研究では反射音定位が盲人の姿勢制御に果たす役割を解明することを目的とした. 平成13年度 (1)側面方向の反射音定位が姿勢の動揺に果たす役割を明らかにした. 平成14年度 (2)前方向の反射音の変化量と姿勢の動揺の程度との関係を明らかにした. (3)反射音の変化に最も鋭敏に応答する身体部位を推定した. 研究方法 (1)被験者 実験の被験者には先天性・後天性盲人及び晴眼者を用いた. (2)手続き 無響室内において複数のスピーカよりピンクノイズを提示し,聴取時における被験者の身体動揺を測定した.音刺激提示及び身体動揺の測定はパーソナルコンピュータにより制御された. 研究成果 (1)側面方向での音刺激の移動に対し盲人の被験者が協応した身体動揺を示した.さらに,正面方向よりも身体動揺の量は大きかった. (2)前方方向での音刺激の変化量にほぼ比例して盲人の被験者の身体動揺は大きくなる傾向になった. (3)頭部・腰・膝の動きを同時に測定したところ,最も鋭敏に動揺するのは頭部であり,ちょうど逆振り子のように頭部・腰・膝の順で動揺の程度は小さくなる傾向にあった. 結論 本研究により,音刺激の変化に同期する姿勢動揺が認められ,このことは視覚刺激の変化に伴う姿勢の動揺と類似した結果となった.従って,盲人の姿勢の制御には聴覚刺激が影響を及ぼしていることが明らかとなり,健常者の姿勢制御における視覚刺激の効果と酷似していると結論できる.
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