本研究の目的は、ヒト高血圧症の発症に関わる遺伝子や、血圧調節に関与する未知の遺伝子を探索することである。 家系内に高血圧発症者を持ち、高血圧を発症した患者より検体を採取し、total RNAを用いて蛍光ディファレンシャル法(FDD法)にて比較を行った。3種のアンカープライマーと25種のアービタリープライマーを用いてFDD法を行った結果、高血圧患者において発現量が増大しているcDNA断片が10個と、発現量が低下しているcDNA断片が5個得られたため、これらのcDNA断片を候補cDNA断片としてさらに解析をすすめた。 はじめに候補cDNA断片の発現異常を確認するため、ノーザンブロットハイブリダイゼーションを行ったところ、高血圧患者において発現量が増大している候補cDNA断片10個のうち2個で発現異常が確認された。また、発現量が低下している候補cDNA断片5個はいずれも発現異常が確認されなかった。 次に、高血圧患者において発現量が増大している候補cDNA断片に対し、配列を決定するためシークエンスを行った。得られた配列は未知のものであり、この候補cDNA断片の全長を得るため、クローン化し、レース法を用いて全長の配列を得た。 これらの候補cDNAの発現異常が、通常の高血圧患者において認められる例があり、これを解析中である。 また、既知の高血圧に関する遺伝子座位と比較するため、FISH法を用いてこの候補cDNAの遺伝子座位を検索中である。 今後、アービタリープライマーの数を増やしさらに新たな候補cDNA断片の探索を行う予定である。また、症例数を増やし、新たな候補cDNA断片の探索を行う予定である。
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