配分額 *注記 |
118,560千円 (直接経費: 91,200千円、間接経費: 27,360千円)
2006年度: 18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2005年度: 18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2004年度: 18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2003年度: 18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2002年度: 43,680千円 (直接経費: 33,600千円、間接経費: 10,080千円)
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研究概要 |
1)膜タンパク質に適応可能なNMR戦略法の確立 当研究室で開発された交差飽和法は、従来のNMR測定法に比較して厳密に高分子量蛋白質の界面残基を決定する測定法である(Nature Struct.Biol.(2000))。しかしながら、交差飽和法では直接複合体のNMRスペクトルを測定しなくてはならないため、100K以上の巨大蛋白質複合体の場合適応できないという欠点があった。そこで、転移交差飽和法(TCS法)を考案した。TCS法では、遊離のリガンド蛋白質由来の交差飽和現象を用いて界面残基を同定するため、複合体の分子量に上限は存在しないことが考えられる。そこで、プロテインA・Bドメインとインタクト抗体の複合体(164K)を用い、NMR測定を行った。適切な条件化で測定を行った結果、遊離リガンド分子を用いても界面残基の同定ができることが示された(J.Mol.Biol.,(2002))。このことは、従来は不可能であった、膜タンパク質のような高分子量蛋白質や細胞表面に発現している受容体とリガンドとの相互作用解析が、可能になることを示す。さらに本手法を繊維状コラーゲンとコラーゲン結合タンパク質の相互作用解析に応用した。von Willebrand factor(vWF)は、血管内皮細胞がダメージを受け、その結果露出したコラーゲンと血小板受容体との橋渡しをする蛋白質で、血小板凝集反応の最初のステップに関与する。vWFのコラーゲン結合能はA3ドメインが担っている。A3ドメインとコラーゲンとの相互作用解明は、生化学的にも創薬の観点からも重要な問題であるものの、コラーゲンが生理的条件下で繊維形成し超分子を作るため、X線結晶構造解析を初めとした従来の構造生物学的手法では解析できなかった。そこで、TCS法を用いて、vWFのA3ドメイン上のコラーゲン結合部位を同定した。この結果は、世界で初めて、繊維状コラーゲンとコラーゲン結合蛋白質との相互作用解析に成功した例であり、Nature Struct.Biol.(2003)に掲載された。 2)イオンチャネルとイオンチャネルブロッカーの相互作用解析 KイオンチャネルであるKcsAとそのポアーブロッカー(AgTX)との相互作用解析をTCS法により行った。交差飽和現象の指標となるNMRシグナル強度の減少は、AgTx分子内においてα-Helixの前半およびβ-strand IIに属する残基に顕著であり、それらは分子表面で1つの連続した面を形成した。よって、AgTxはこの面を用いてKcsAと結合すると結論した。さらに、同定された結合界面に対して部位特異的変異を導入し、結合親和性の変化を測定した結果、結合界面上に存在する残基のほとんどで結合定数が低下し、同定された結合界面が結合親和性に寄与していることが示された。次に、TCS法におけるシグナル強度変化を満たすように分子動力学的計算を行うことで、AgTx-KcsA複合体の立体構造モデルを構築した。その結果、AgTx分子はK+選択フィルターを中心としたKcsA上のキャビティーに収納されるようにして結合することが明らかとなった(図10)。また、当研究室で発見したポアーブロッカー上に存在する構造モチーフとの対応より、KcsAの64位および84位でが、ポアーブロッカーの認識に重要な役割を示す残基であることが判明した。実際、他のチャネルのアミノ酸配列の比較から、AgTx感受性チャネルではこれら残基が保存されていた。よって当該部位の保存性の違いによりK+チャネルのポアーブロッカー対する感受性が決定されると結論した(Structure,(2003))。
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