研究課題
基盤研究(A)
本研究では、グリアによるシナプス活動の制御を小脳及び海馬のグルタミン酸作動性シナプスを対象として解析し、ニューロン・グリア機能連関の実態を解明することを目指した。主な研究成果は以下の通りである。1.グルタミン酸トランスポーターによる小脳シナプス活動の制御小脳プルキンエ細胞の興奮性シナプスの周辺に存在する4種類のグルタミン酸トランスポーターである、(1)GLAST、(2)GLT-1、(3)EAAC1、(4)EAAT4が、シナプス伝達制御に果たす役割の全体像を明らかにした。すなわち、ベルクマングリアに発現するグリア性トランスポーターである(1)と(2)は協調して、放出されたグルタミン酸を直ちに回収する。(1)はタンパク量にして(2)の約6倍存在するが、このシステムの安全率は高く、(1)が消失しても(2)のみでこの機能の大部分は維持される。プルキンエ細胞に発現する神経性トランスポーターのうち、(3)はシナプスで放出されるグルタミン酸の回収にはほとんど関与していない。(4)はグリア性トランスポーターによる回収を免れた少量のグルタミン酸を回収し、これらが隣接シナプスに拡散することを防ぐ。2.グルタミン酸トランスポーターによる海馬ニューロン活動の制御新規に開発されたグリア性グルタミン酸トランスポーター選択的阻害剤(TFB-TBOA)は、成熟ラットでGLT-1、GLASTの活動を阻害し、シナプス間隙ヘグルタミン酸を貯留させて、NMDA受容体の持続的活性化により海馬錐体細胞に痙攣波を発生させ、次いで持続的脱分極をもたらす。このことは、グルタミン酸トランスポーターの機能低下がてんかんの病因となることを示唆する。3.グリオーマ細胞におけるAMPA受:容体の発現と突起伸展の制御ヒト由来グリオーマ細胞をモデルとして、ベルクマングリア等のグリア系細胞に発現するカルシウム透過性AMPA受容体の活動が細胞の突起伸展を促進することを明らかにした。
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