研究概要 |
本研究は,サブミクロン幅の溝内に穴底から優先的に銅の堆積が進む「プラズマ異方性CVD」の堆積特性について調べたものである.この「プラズマ異方性CVD」は,筆者等が初めて見出したものであり,従来のCVDの問題点を克服できる可能性を有する新しいナノ構造作製技術である.本研究で得られた成果は,以下の通りである.1)銅錯体材料を原料とするプラズマCVDにおいて,基板表面に入射するイオンのエネルギーを制御することにより,サブミクロン幅の溝内において,側壁には体積が生じず,穴底から優先的に堆積が進むプラズマ異方性CVDを実現できる.2)狭い溝ほど,また深い溝ほど穴での成膜速度が速くなる条件が存在する.3)溝内の穴底のみに成膜が生じ,基板表面には成膜が生じない条件が存在する.この場合,溝を完全に埋め込んだ直後に成膜が自己停止する.この特長を用いるとCMPフリーの配線行程を実現できる可能性があり,機械的強度の弱いポーラス系低誘電率絶縁膜と銅配線の組み合わせを用いる,将来のLSI作製行程として有望である.4)プラズマ異方性CVDを実現には,成膜表面へのイオン入射が不可欠である.5)プラズマ異方性CVDの成膜速度は,イオン入射にアシストされた成膜の速度と,通常の中性ラジカルによる成膜速度の和からスパッタリング速度を引いたものになると考えられる.6)プラズマ異方性CVDの成膜速度は,ArとH_2の混合比に大きく依存し,Arが多いほど成膜速度は速い.7)銅の抵抗率は4・・cmとバルク値の2倍程度であり,今後,不純物量低減と銅の結晶サイズの増大に効果がある,水素原子照射量を増加し,さらに低減する必要がある.また,溝内に堆積した銅の物性評価方法については今後開発する必要がある.
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