研究分担者 |
阿部 康二 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (20212540)
永野 功 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (80335603)
松原 悦朗 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (70219468)
池田 将樹 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (50222899)
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研究概要 |
1)Tg2576の記銘力障害が脳のアミロイド斑出現以前に始まっており,脳内アセチルコリンの選択的な低下に相関していることを示した.Tg2576では神経原線維変化以外のすべてのアルツハイマー病における脳の変化を再現し,アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の検討にも優れたモデルであることをしめした.2)Tg2576とPresenilin-1 L286V double transgenic mouseで,脳アミロイドーシスの発現促進と二次性tauopathyの誘発について解明し,高齢のdouble transgenicマウスではstraight tubulesが出現することを明らかにした.3)抗Aβ40およびAβ42特異抗体による受動免疫療法の検討では,抗体の腹腔注射で血液Aβ40およびAβ42が〜5倍ほど選択的に増加することが判明した.これらの抗体が脳からAβ40およびAβ42を選択的にくみ出すことを明らかにして,現在論文を作成中である.抗Aβ抗体は脳アミロイドとして老人斑に蓄積している以前のAβ protofibrilあるいはAβ oligomerに作用して,行動異常を改善することを明らかにした.4)脳アミロイドの超早期形態としてのAβ dimerがTgマウスやアルツハイマー病患者の脳のlipid raftに蓄積してくることがアルツハイマー病における最も早期の変化であることを明らかにし,治療の重要な対象であることを明らかにした.lipid raftにおけるアミロイド沈着にともなったApoE,リン酸化tauの二次的蓄積を明らかにした.5)メラトニン投与によって,脳アミロイドの蓄積が抑制され,行動異常が改善されること,生存率の改善と酸化ストレスの抑制がみられた.現在,ヒトの臨床応用に向けた臨床試験の準備中である.6)simvastainの効果を検討したが,動物レベルでのAβ蓄積抑制効果は明らかではなかった.しかし,lipid raftレベルではコレステロール依存性γ-セクレターゼの制御によるAβ生成の制御は可能であった.さらに,1800剖検例でApoE遺伝子型を補正した群において,壮年期の高コレステロール血症がアルツハイマー病発症のリスクであることを明らかにした.以上のことから,薬剤による高コレステロール血症の是正がアルツハイマー病の予防に有用であることを示しており,今後,他のスタチン系薬剤による細胞レベル,モデル動物レベル,さらに多数例の前向き二重盲検試験による検討が必要で有ることを示した.
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