研究課題
基盤研究(C)
本研究は、中国近世の士人に学ばれるものとしての「朱子学」の成立は朱熹以後の南宋から元、明にかけての文化、社会史的状況から生じてきた問題であると捉え、慶元6年(1200)の朱熹の死の前後からそれ以降、その直接の門人を中心として朱熹学術受容者層の動向に注目することにより、南宋後期に士大夫思想界でいわゆる「朱子学」が形になっていく姿を解明しようとしたものである。本研究の主な成果は、以下の通りである。1.「朱子学」の形成を検討する上で、朱熹の高弟達が重要な役割を占めることを明らかにした。特に資料の整備活動と解説書作成の意義について考察した。単に儒学教学学説を保存し伝えるというだけではなく、彼らが朱熹思想の思考を「真理」とみなして吸収し、さまざまな思想・学術の再生産活動をしたがために朱熹を見知らぬ次世代にその思想、学術が伝わったわけである。2.その多くは地域社会に生きる初伝、再伝の朱熹思想受容者達にその学術が魅力的なものと映ったその浸透力の一端が、学びとは自分自身のための自己修養の学び、「為己の学」だと朱熹が説いたことにあることを明らかにした。科挙文化が整備されていく時代だからこそ、科挙を一見批判する「為己の学」というこの主張が意味を持ったと考える。3.「朱子学」の鍵概念の多くは、はじめから朱子学的用語に使える言葉として表出されたわけではなく、その思考法の個々の要素も一時に生成したわけではないことに着目し、それら個々の鍵概念や要素が「朱子学」の中で各々の位置を占める過程を検討する必要があることを、「知覚」、「理一分殊」という語を事例としつつ、明らかにした。なお、個別門人の心性と社会活動に関する解析について事例に則した充分な成果を出すまでに至らなかったのは遺憾である。今後とも検討を続け、南宋末における「朱子学」普及のしくみと実態の解明を進めていきたい。
すべて 2006 2005 2004 2003 2002 その他
すべて 雑誌論文 (24件) 文献書誌 (3件)
中国の思想世界(中嶋先生退休記念事業会編)(イズミヤ出版)
ページ: 247-276
The World of Chinese Philosoy (IZUMIYA shuppan)
東洋古典学研究 第20集
ページ: 165-178
THE TOYO-KOTENGAKU-KENKYU Vol.20
アジア遊学 64
ページ: 99-109
Chinese society and its significance after the Tang-Song reformation : with focus on the civil service examination, urbanization, and lineage systems. 37th ICANAS 発表論文冊子
ページ: 16-25
中国思想における身体・自然・信仰-坂出祥伸先生退休記念論集-(東方書店刊)
ページ: 95-112
東洋古典学研究 第18集
ページ: 169-184
THE ASIA YUGAKU No.64
Chinese society and its significance after the Tang-Song reformation : with focus on the civil service examination, urbanization, and lineage systems (The booklet for presentation at ICANAS2004)
The Body, Nature, Religion in Chinese Philosophy (TOHO syoten)
THE TOYO-KOTENGAKU-KENKYU Vol.18
Chinese society and its significance after the Tang-Song reformation : with focus on the civil service examination, urbanization, and lineage systems. 37th ICANAS in Moscow(英文冊子)
中国思想における身体・自然・信仰-坂出祥伸先生退休記念論集-』(東方書店刊)
Interactions and Daily Life : Sings of Changes in the Song Society (2003年米国AAS年次大会発表論文冊子)
ページ: 1-10
東洋古典学研究 第15集
ページ: 143-158
Interactions and Daily Life : Sings of Changes in the Song Society (The booklet for presentation at AAS2003)
THE TOYO-KOTENGAKU-KENKYU Vol.15
創文 444号
ページ: 15-18
THE SOBUN No.444