研究課題
基盤研究(C)
本研究は、存在論(実在論)をベースにした多元主義的存在論を構想し、存在諸次元の媒介によって社会諸関係が成立するという理解のもとに、新たな社会理論の基礎研究をめざすものである。このことによって、倫理問題の社会的構成をとらえ、同時に、歴史法則主義によって歪曲されてきたマルクス的な社会批判と実践理論を克服し、社会的行為実践における倫理的問題を同時に扱う視野を開こうとするものである。02年度は、倫理的な行為論にかかわって、アーレントの公共空間論の思想を検討し、論文「H.アーレントの公共空間の思想」を執筆した。この過程で、「現れの空間」における倫理問題についての、アーレントの思想理解を深めた。03年度は、ヴェーバーの多元主義的社会理論構成の構造理解についての検討を行い、論文執筆の展望を得たが、彼の認識論をめぐって検討課題が見つかり、計画を変更した。なお、同年度は、文化論の基礎的理解を解説した論文「人間と文化を考える」を執筆し、文化現象を多元主義的存在論をモチーフに理解する試みをおこなった。04年度は、研究成果報告を延期していただき、二つの論文を執筆した。まず、アーレントとマルクス思想の比較検討を行い、「ハンナ・アーレントはなぜ見直されているのか」を執筆し、その思想全体の評価の基本点を大まかに整理することができた。また、M.ヴェーバーに関する論文「M.ヴェーバーの価値自由論とその世界観的前提-多元主義的存在論の視点による読解の試み-」を、年度末に執筆した。本論文は、M.ヴェーバーの価値自由論に焦点を据えて、その「世界観的な了解構造」を「多元主義的存在論」という視点から、解読する試みである。本論文は、多元主義的存在論の理論構造を考察したものであり、本研究構想全体の基礎がためとなるものである。なお、上記論文に続いて、ヴェーバー社会科学論の全体を扱う続編の執筆を想定しており、継続的な研究の深化をはかっていく予定である。当初、計画した、マルクス、ヴェーバー、ハルトマン、ポッパー、アーレントらの思想を批判的に継承した総合的な多元主義的存在論にもとづく社会理論の構築という構想は、なお引き続き時間を要する仕事とならざるをえない。当初の計画通りには進まなかったが、これまでの研究で、その全体的な研究の展開に確かな見通しを得たものと自負している。
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