研究概要 |
平成11年ころから司法制度改革審議会を中心として本格化した司法制度改革のための検討において、刑事司法については、裁判員制度の導入や公的刑事弁護制度の整備と並び、刑事裁判の公判の充実・迅速化を促進することが大きな課題とされた。そして,同審議会は,平成13年6月に公表した報告書において,この刑事公判の充実・迅速化を図るため、平成争点整理や証拠開示などを含む新たな公判前の準備手続の創設や公判の連日的開廷、刑事事件専従の弁護体制の確立、公判における直接主義・口頭主義の実質化などを内容とする改革を提言した。これらの方策の具体化にあたっては、諸外国の経験や実績に学ぶとともに、法理論的にも検討すべき問題が数多く存在したが,本研究では、それらの方策のうちでも、特に準備手続の在り方や公判の連日的開廷、公判審理の在り方について、欧米諸国の法制や実情を調査し、また方理論上の問題点を分析検討することにより、それらの具体化策のあるべき姿を追及しようとした。このため、関連資料の収集・分析を行うとともに、関係機関から実情を聴取し、我が国の問題状況を確認したうえで、関連文献・判例の分析や諸外国の問題状況につき比較法的検討を行い、それらを基礎として、研究代表者および分担者の問で問題点につき討議を積み重ねた。その結果、成果が得られた点については、順次、論文等として公表した。上記改革の具体化は,司法制度改革推進本部裁判員制度・刑事検討会での検討を経て,平成16年5月の裁判員法の制定および刑事訴訟法の一部改正(公判前整理手続,期日間整理手続,証拠開示手続,即決裁判手続,被疑者国選弁護制度の導入等)により実現したが,本研究の成果は,その立案の作業に一定の影響を与えたばかりか,成立した法制度の解釈・運用にも有用な指針を与えるものと思われる。
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