研究概要 |
【目的】食道がんの手術侵襲、また担癌状態はT細胞性の免疫能低下をもたらすと考えられる。癌患者におけるT細胞機能不全の機序として、腫瘍浸潤マクロファージがcontact dependentにT細胞のsignal transducing TCR zeta分子を障害し、apoptosisを惹起することを報告してきた。このcontact dependentなmediatorのひとつとしてH2O2が関与している。そこで、さらに担癌での単球・マクロファージ系の変動を検討する目的で、単球の表面抗原、H2O2産生能、細胞内cytokineを測定し、担癌での単球の変動を評価した。【方法】健常人、早期胃癌患者、進行胃癌患者の末梢血より単球を分離し表面抗原(HLA-DR、MAC-1)の発現、H2O2産生能、細胞内IL-10,IL-12をflow cytometerで測定した。さらに健常人より分離した単球を患者血清と混合培養し単球の細胞内IL-10,IL-12を測定、さらに患者血清に抗VEGF抗体、抗TGF-β抗体、抗IL-10抗体を加え、健常人単球にVEGF,TGF-β,IL-10を加え同様に測定した。【結果】健常人(n=14)、早期胃癌患者(n=17)、進行胃癌患者(n=14)の間に、表面抗原の発現、H2O2産生能において、有意差は認められなかった。単球細胞内IL-10,IL-12は健常人と進行胃癌患者間、早期胃癌と進行胃癌患者間で有意差を認めた。その現象は患者血清を健常人単球に添加することで再現され、抗VEGF抗体で阻害され、健常人単球にVEGFを加えることでもこの現象は再現された。【結語】胃癌患者では、癌の進行とともに単球細胞内cytokineのレベルにおいて機能的差異が存在し、この機序として、患者血清中の因子、特にVEGFが関与していることが示唆された。
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