研究概要 |
遺伝子多型はRFLP法にてエストロゲン受容体αのPvu II、Xba I、エストロゲン代謝酵素;CYP17(エストロゲン生合成、高活性A2/A2)、CYP1A1(水酸化、高誘導性vt/vt)、COMT(不活化、低活性L/L)を解析した。Pvu II、Xba I、CYP17,CYP1A1、COMT遺伝子多型の各Allelleの分布はHardy-Weinberg平衡と一致した。Pvu II、Xba Iそれぞれの遺伝子多型3群間および2つの組み合わせの7群間で初経年齢、閉経年齢、有経年数にて有意差は認めなかった。A1/A2を有する女性の初経年齢(13.6±1.2歳)はA1/A1を有する女性(14.1±1.3歳)よりも有意に早かった。閉経年齢、有経年数においてはA1/A1,A1/A2,A2/A2、CYP1A1(vt/vt,vt/wt,wt/wt)およびCOMT(L/L,L/H,H/H)の遺伝子多型3群間では有意差を認めなかった。CYP17遺伝子多型が初経年齢に影響を与えている可能性が示唆された。次にエストロゲン代謝酵素遺伝子多型が直接骨密度・骨密度変化率に与える影響を検討した。CYP17遺伝子多型のA2/A2を有する女性の総大腿骨骨密度(T-BMD)低下率はA1/A1,A1/A2を有する女性よりも有意に低く、COMT遺伝子ではH/Hを有する女性の橈骨遠位端骨密度(R-BMD)の低下率はL/L,L/Hを有する女性よりも有意に低値であった。CYP1A1(vt/vt,vt/wt,wt/wt)遺伝子多型3群間では差を認めなかった。さらにエストラジオール(E2)、テストステロン(T)、アンドロステンジオン(AND)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)などの血中性ステロイドホルモンと骨密度・骨密度変化率との相関を検討すると、DHEA、AND値は体幹骨(L)骨密度および末梢骨[T、大腿骨頸部(FN-BMD)、R]骨密度と有意の正相関(r=0.194-229;P<0.05)を有し、E2、AND値は腰椎(L-BMD)変化率と有意の相関(r=0.205、-0.139;P<0.05)を示した。骨密度変化率を見るとT-BMDでA2/A2で+2.22%、他の群は-0.38%、-0.56%、R-BMDでL/L、L/H、H/Hの順に-3.91%、-1.58%、-1.34%であった。最後にエストロゲン代謝酵素遺伝子多型と血中性ステロイドとの関係を見るとDHEA値はA2/A2で他の群に比し有意に高く、AMD値はL/L、L/H、H/Hの順で高く、TS値はL/Lで他の群に比べ低かった。以上より4年間の研究を総括すると閉経後日本人女性において、エストロゲン代謝酵素の遺伝子多型は直接的あるいは性ステロイドホルモンを介して間接的に骨密度、骨密度変化率に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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