研究概要 |
平成14年度では,従来われわれが使用してきた非増殖性アデノウイルスベクター(COS-TPC法により作製)の増殖と精製を行い,高力価ウイルス液8.75×10^8plaque forming unit(PFU)/mlの高力価ウイルス液を得た.そしてマウス,ヒト筋芽細胞を用い,BMP-2アデノウイルスベクターを感染させ,BMP MOI-20でALP-activityが1.3 +/- 0.4、IU/mg proteinにまで上昇することを確認した.一方,コントロールのLacZ MOI-20ではALP-activityの上昇は起こらなかった.平成15年度はin vivo検定を行い,BMP-2アデノウイルスベクターでは,免疫抑制下にラット下腿筋肉内に注入し,X線学的および組織学的検査で異所性骨誘導が認められたことを確認した.さらに,このウイルス液(8.75×10^8plaque forming unit(PFU)/ml)を用いて,ラット下腿の実験的骨延長術に使用した.先ずラットに骨延長装置を装着し, 1)骨きり部位に待機期間の0,3日後にウイルス液(10ul)を注入した. 2)待機期間を経た後,延長期間7,14日後に注入. 3)固定期間7,14日後に注入した. 結果:2)延長期間中にウイルス液を注入したものが組織学的に良好な成熟した骨形成が観られ,骨量も同様に増加していた.これは1日あたりの骨延長量を増大できる可能性を示唆している.しかし,形成される骨形態の制御は困難で,ウイルス注入量と注入方法に課題が残った.残りの1),3)の実験では骨形成はウイルス注入した部位のみに観られ,延長期間そのものに影響を及ぼさなかった.ALP activityは,ウイルス液を注入しないコントロール(1.25 IU/mg Protein)に比べて,2)は約4倍(4.92 IU/mg protein)であった. 結論:骨延長に対してrhBMP-2は,延長時期に投与するとその異所性骨誘導能により,骨形成を増大させ、延長期間を縮小させる可能性が示唆された.
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