研究課題/領域番号 |
14572136
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
医療社会学
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
鈴木 晃仁 慶應義塾大学, 経済学部, 助教授 (80296730)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2004
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研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
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配分額 *注記 |
2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
2004年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2003年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2002年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 精神病院 / 家族 / 精神医療 / ジェンダー / 在院期間 / 医師=患者関係 / マラリア療法 / インシュリンショック療法 / 電気痙攣療法 |
研究概要 |
戦前の日本において最も先進的な精神病院であった王子脳病院(小峯病院を含む)のアーカイヴに保存されている患者記録を組織的にデータベース化したうえで、患者動態の研究を行った。そもそも堅固な実証に基づく日本の精神病院の歴史研究は数少ないが、患者名簿の全て(大正15年から昭和20年)までと、入院日誌の相当数(約4000件、全体の2/3)のデータ処理に基づいた研究は日本では始めてであるし、国際的なコンテクストでも、特に後者まで含めた点は、先駆的な研究であると自負している。 この研究から明らかになった日本の精神病院の姿は、これまでの多くの思い込みを訂正した。その中でもっとも重要なものは、在院期間、すなわち患者はどのくらいの期間にわたって病院に滞在したのかという問題である。王子脳病院の私費患者については中央値でいうと40-45日という、諸外国の対応する数字よりもはるかに短い数字が得られる一方、公費患者については、同じく中央値で計ると700-900日という、諸外国よりも長い数字が得られた。公費患者については、治療を目的とした医療というより療養と監禁が目的になっていたことが伺われる。一方、私費患者に対しては、当時の最先端の医療も活発に行われており、先端医療をインテンシヴに実施して退院させるという、治療を中心にしたパターンが現れていたことが伺える。その一方で、必ずしも厳密な意味で精神病患者とはいえない家庭の中で問題的な行動を取るものを懲罰的に短期間入院させる例も少なからず存在したことも付言されなければならない。 在院期間を疾病分類別に見ると、予後が悪く慢性化しやすい精神分裂病は在院期間が長く、急性的な経過を辿るものについては在院期間が短いという、予想される結果がでた。それよりも興味深いのは、男女による在院期間の違いである。同じ疾病分類の中では、男性は在院期間が長く、女性は短い傾向が観察される。このことと、男性の入院患者は女性の2倍近い、ということなどを合わせて考えると、女性の精神病患者は、家庭でケアされる可能性がより高かったと考えられる。
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