研究概要 |
平成14,15年度は,technical communication技能の指導法を解明するための基礎となる,(1)説明(instruction)場面での説明者モデルの構築,(2)説明の手段として不可欠な図表の理解及び使用,の2点を検討した。その結果,(1)重要な説明技能とは,指導相手の操作学習目的と操作スキルを適切に把握し,解決目標を特定し,必要な説明をon-lineで与えられることである。また,手続き的知識の説明では,マニュアル説明の方が口頭説明よりも理解の持続性に優れる,(2)説明手段として図表を使用する際,説明相手の学習スタイルによって理解しやすい図表のタイプ及び提示方法が異なること,説明内容によって適切な提示方法を選択することも重要な説明技能であることが明らかになった。また,図表の適否判断が指導場面と自己学習場面とで異なることもわかった。 平成16年度は(1),(2)の研究を統合することをねらいにした。現在,学校での学習場面でtechnical communication技能を最も活用し,今後もその重要性が増大するのはWeb教材による自己学習である。この形態による学習を有効に展開するには,(1)Web呈示教材の理解過程の解明,(2)Web教材の特色である文章情報と図表情報を統合して理解する過程の解明,が必要である。そこで,研究では,Web教材の情報検索過程をon-lineで把握し,文章情報と図表情報の情報検索時間や理解過程を明らかにして,Web教材作成のための基礎的知見をまとめた。その結果,文章情報と図表情報の呈示のしかたによって情報の検索がパターン化するかどうかに影響し,情報にランダムにアクセスできる形態での呈示が有用であることが示された。 以上の研究を通じて,テクニカルコミュニケーション技能の育成における説明技能の様相,特に図や文章を組み合わせて多様なメディアで行う情報呈示のあり方について多数の知見が得られた。今後は,説明技能の中でも特にpresentation技能に着目し,その指導のあり方を検討していきたい。
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