研究概要 |
1.乳幼児の補聴器の器種選択法について 乳幼児の言語習得にあたって,自・他声の音圧バランスという要因が,補聴器選択の際に当然考慮されるべき要因である。器種選択法としては,発声発語の重視から自声がより強く入力されるポケット形補聴器が推薦される。自他声差の観点から考えると,耳かけ形≒ベビー形であり,ベビー形補聴器のコードによる活動の制限・雑音の拾取や,イヤレベルでの補聴を考える場合,耳かけ形補聴器の有効性が示唆された。耳かけ形への移行時期のピークは18ヶ月以上〜24ヶ月未満であり,耳介の成長・歩行姿勢の安定が理由であることが分かった。ベビー形補聴器から耳かけ形補聴器への移行時期は耳介が成長して補聴器がしっかり乗るようになり,装用児の座位が安定した時期が適切であると考える。 2.乳幼児の補聴器の適合・推薦方略と評価について 乳幼児の生活環境も指向性マイクや雑音抑制機能の効果が期待できる騒音下であることが明らかになった。さらにいくつかの乳幼児の生活環境下でそれぞれの機能による雑音抑制効果を評価した。結果,それらの機能によって雑音が抑制されていることが認められた。一方で,遊び場面では周囲にいる他の子どもの音声も抑制されてしまうことがわかり,指向性マイクの使い方にはさらなる検討が必要であることが示唆された。 3.総合考察 乳幼児に対しては耳かけ形補聴器が推薦されるべきである。しかし装着上,支障がある場合は,ベビー形補聴器を使用し,耳かけ形補聴器に移行することを考える。指向性マイク,雑音抑制機能が使用できるデジタル補聴器は,乳幼児の生活環境雑音を抑制することが可能であり,その有効性が確認できた。しかし,生活環境音や,周囲の話声をも抑制するので,使用にあっては場面によって切り替える機能を備えた補聴器を選択するべきである。
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