研究概要 |
本研究では、リガンドで活性化されたTrkレセプターからシグナル伝達が出発する段階に特に注目し、このシグナル伝達出発段階に関与する多様なTrkレセプター結合シグナル伝達蛋白質を可能な限りすべて同定し、それらの蛋白質のシグナル伝達における機能を明らかにすることを目的とした。NGF, BDNFによるTrkA, TrkBレセプターを介レたシグナル伝達に関与する新規蛋白質の同定を行なう目的で、酵母のtwo-hybrid系を用いて、ラットTrkA及びTrkBレセプターの細胞質領域に結合するシグナル伝達蛋白質のcDNAのクローニングを行なった。今回、リン酸化チロシン残基に非依存的にTrkA細胞質領域に結合する新規のシグナル伝達タンパク質cDNAとして、独立に20〜30のクローンが得られた。各クローンの塩基配列からデータベースにより合計7種類の蛋白質を同定した。それらは、gephyrin, Rho GTPase activating protein( RhoGAP),nucleoside diphosphate kinase B, nucloporin 153,nucleoporin p58,κB motif-binding phosphoprotein,105kD kinase like proteinであった。これら7種類の内前3者は、野生型TrkB細胞質領域とは結合しなかったが、キナーゼ欠損TrkA及びキナーゼ欠損TrkB細胞質領域両方に結合したので、TrkAとTrkBの相同領域部分に結合していると思われる。Rho GTPase activating protein (RhoGAP)と2種のnucleoporinは、TrkAのキナーゼ欠損体と野生型の両方に結合した。κB motif binding phosphoprotain,105kD kinase like proteinは、キナーゼ欠損TrkAとのみ結合した。これらの蛋白質のTrkレセプターとの細胞内での結合を、PC12細胞とTrkB発現PC12細胞を用いて、免疫沈降法により確認し、それらのTrkシグナル伝達における機能を解析中である。
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