研究概要 |
本研究の目的は,インドネシア海洋大陸域における水・エネルギー循環システムの基本要素である降水活動の分布と動態を把握し,その定量的解明を目指すことである.具体的には,(1)熱帯対流活動の基本変動モードである日周期変化に着目した熱帯降雨観測衛星(TRMM)データ解析,(2)スマトラ島複数地点におけるにおける高層ゾンデ集中観測による局地循環系の把握,(3)海洋地球研究船みらい東インド洋上観測に基づく対流活動の海陸間比較,(4)対流活動と局地循環系の相互作用およびその季節(内)変動に関する考察,の4項目を実施した. 初(2002)年度には,(1)TRMMデータ解析に要する計算機環境を整備すると共に,(2)スマトラ島沖100kmに位置するシベル島への観測機器設置,(3)みらい乗船観測による東インド洋上気象データの取得,および(3)前年度末に経常研究費にて実施された高層ゾンデ観測データの解析を行い,今後の研究体制を確立した. 翌(2003)年度は,(1)データベース化されたTRMM衛星データの解析を進めた結果,スマトラ島南西海岸線を中心として日中帯には内陸側へ,夜間には沖合側へ進行する降水ピークの日周期海陸間移動を見出した.(2)高層ゾンデ観測結果から,対流発生起源は大規模場(南西モンスーン)と局地循環の相互作用によること,(3)逆に対流圏中層の風速日周期が降水ピーク海陸間移動によって変調されていることが判明した. 最終(2004)年度には,(1)東インド洋上観測結果からスマトラ島沖における対流活動の特徴と季節内変動の関係を明らかにし,(2)静止気象衛星データを用いた解析から対流活動日周期海陸間移動の季節変動および熱帯集束帯(ITCZ)など大規模場との相互作用に対する考察を深めた.(3)これらの結果を基に,「洋上-島嶼-陸上」間を相互に変質しつつ移動する対流活動のメカニズムについて領域気候モデルを用いた研究を展開中である.
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