研究概要 |
【背景】関節リウマチ(以下、RA)治療におけるMTXの作用機序については葉酸代謝拮抗による細胞増殖抑制作用が最も大きく関わると考えられている。Thymidylate Synthase(以下、TS)はdTMPプールを維持するための酵素であり、TS酵素活性は血漿葉酸濃度やホモシスチン濃度に影響する可能性が示唆される。TS遺伝子5'UTRのSNPで,3R3R遺伝子型を有する群で血漿葉酸濃度の低下、高ホモシスチン血症との関連が報告されている(Hum Genet 111, 299, 2002)。Reduced folate carrier(以下、RFC)は哺乳類細胞におけるMTXの主要なトランスポーターであるが、G80A(His27Arg)多型が報告されている。2002年Carolineらは、小児急性リンパ性白血病のMTX治療例における検討で、GG遺伝子型を有する群は他群と比べて血漿MTX濃度が有意な高値で、予後が良好であったと報告している(Blood 100, 3832, 2002)。これらの遺伝子多型の臨床的有用性について検討した。【方法】14年度と同様の症例群106例のゲノムDNAを用いTSおよびRFC遺伝子型をPCR(TS),PCR-RFLP(RFC)にて検討した。対象患者においてMTXは2.5-7.5mg/週で開始され臨床効果に応じて増量された。MTXの有効性はMTX5mg/週で開始された症例における投与前後3ヵ月間の圧痛/腫脹関節数、CRP値、赤沈値の比較で検討した。【結果】TSおよびRFC遺伝子型による副作用発症の統計学的な有意差は認められなかった。有効性との関連では、TS遺伝子における3R3R遺伝子型を有する群でCRP値の有意な改善を認めた(p<0.005)。赤沈値、疼痛/腫脹関節数の検討では統計学的有意差は認められなかった。RFC遺伝子型による有効性との関連は認められなかった。TS遺伝子型の検討はRA症例におけるオーダーメイド医療に有用な可能性がある。
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