研究概要 |
HCV高感染地区(福岡県)を対象とした肝臓病検診の予後追跡調査 C型肝炎ウイルス(HCV)は,肝硬変および肝細胞癌による死亡の主な原因となっており,増加の一途をたどっている。この傾向は2010年〜2015年頃まで続くものとされており,肝細胞癌の対策は極めて重要である。我々は,福岡県のH町で,1990年より定期的に肝臓病検診を行ってきた。1990年に選出された509名(無作為抽出法による町在住の1割住民)の12年後(2002年)の予後追跡調査を行うことを目的に検診を行った。一方,HCVは肝疾患以外の種々の肝外病変を引き起こすことも知られている。我々は,これらの住民に対して肝疾患のだけでなく肝外病変の発生状況を知るための調査も行った。その結果,(1)H町ではHCVキャリアが高齢化しており,今後高齢者のC型肝炎に対する治療対策が必要である。(2)最近のHCV新規感染はなかった。(3)1990年にHCV感染を指摘されたにもかかわらず,定期的な通院を行っていなかった住民に,肝癌の発生が認められた。(4)インターフェロン(IFN)治療歴のある住民の75%は肝臓専門医で加療を受けていた。従って,かかりつけ医と肝臓専門医との病診連携が不可欠である。(5)肝外病変の有病率は,HCVノンキャリアよりもキャリアでの発現率が有意に高率であった。 HCVキャリア住民(広島県と福岡県)を対象とした肝外病変調査 広島県におけるHCVキャリアでの肝外病変の有病率を調査し,福岡県の結果と比較した。福岡県並びに広島県の両県において,HCVキャリア住民には,扁平苔癬をはじめとする肝外病変の合併が高頻度に認められた。また,HCVキャリアにおける口腔扁平苔癬の頻度は,高齢化する程,高率になることがわかった。HCV感染者にみられる扁平苔癬は,感染のみられない扁平苔癬よりも癌化しやすい事実があり,今後癌化のモニタリングが重要となる。
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