研究概要 |
小中学校の新教育課程に「総合的な学習の時間」(以下,総合的な学習)が創設され,その実践が本格的に展開され始めた。本研究は,小学校の総合的な学習のカリキュラム開発,とりわけ,その体系化において果たすカリキュラムコーディネータの役割を記述し,モデル化することを目的とした。 15年度は,既にこうした立場のミドルリーダーを学校研究の組織に位置づけている岡山と熊本の小学校の「総合専科」を対象とする事例研究を展開した。研究代表者及び同分担者は,それらの学校を複数回訪問して,授業や研究協議に参加し,彼らカリキュラムコーディネータと他の教師による協力教授や指導の分担,両者のコミュニケーション等を観察した。また,彼らに,カリキュラムコーディネータとしての悩み,それを解決するための術,さらには,カリキュラムコーディネータとしての力量形成の機会,ライフストーリーなどについて,インタビューを実施した。 16年度は,まず,英国を訪問し,同国の小中学校のカリキュラムコーディネータを対象とする事例研究に着手した。いくつかの小中学校で観察・面接調査を実施し,いくつかの実践パターンを明らかにした。例えば,ある小学校では,カリキュラム・エンリッチメント・コーディネータが,学級担任をリードしながら,音楽・美術・体育などを連結させたドラマの授業を展開していた。また,ある小学校は,ナショナル・ギャラリーによるプロジェクトに参画し,クロスカリキュラアプローチを実現していた。次いで,研究のまとめとして,日英の事例を比較検討し,両国の総合的な学習,その発展に対してカリキュラムコーディネータが果たす役割について,共通点や差異点を明らかにし,そのモデルを提案した。 両年度とも,研究の中間的な成果を日本教育工学会年次大会や同学会の研究会において報告するとともに,最終年度には,本研究による知見を報告書にまとめた。
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