研究概要 |
発光変調性発光微生物vibrio fischeri Y1の発光挙動の詳しい測定結果に基づいて,発光変調が細胞膜呼吸系タンパク質と共役していることを明らかにした。この共役関係は内因性黄色蛍光タンパク質(YFP)と呼吸鎖電子フローとの電子交換相互作用に起因することが示唆された。さらに単一細胞において,発光変調-呼吸間共役関係の存在を内因性蛍光タンパク質に基づく蛍光顕微鏡測定と発光挙動測定から検証した。 種々のゲル電気泳動法によりYFP,青色蛍光タンパク質(Y1-BFP)及び発光酵素ルシフェラーゼの細胞内発現量を調べた結果,特にルシフェラーゼに対するYFP量の増減が黄色発光の強弱を制御していることが明らかとなった。蛍光イメージングにより,黄色発光細胞はYFPだけでなく同時にY1-BFPを有することも明らかとなった。細胞密度の差に基づいて分画したV.fischeri Y1細胞の蛍光イメージングと発光挙動の解析結果は,密度が最も小さい細胞,即ち細胞質の分裂直前において強い黄色発光が発せられることを示した。以上の結果から,発光変調はV.fischeri Y1の細胞分裂周期と密接に関連していることが示唆された。 発光変調に関わるYFP及びY1-BFPをコードする遺伝子のクローニングを完了した。YFPとY1-BFPはそれぞれ572bp及び600bpの遺伝子にコードされること,且つ異なるタンパク質であることが判明した。さらに,大腸菌によるYFP及びY1-BFP遺伝子の発現を個別に達成した。 発光変調が蛍光タンパク質とルシフェラーゼの発現量に依存することから,細胞分裂周期においてそれぞれの遺伝子の発現に時間差のあることが示唆された。今後発光変調関連タンパク質の細胞内時空分布を調べ,生化学時計の観点から発光変調を考究する。さらに発光変調と細胞周期との分子リンクを解き明かす。
|