研究概要 |
以下の3種類の有機薄膜太陽電池について,その内部電場分布を測定し,内部電場と光電流の相関を調べた。そして光電流発生に内部電場がどのように関わっているかを明らかにした。 1.亜鉛フタロシアニン(ZnPc)ショットキー接合型太陽電池 2.亜鉛フタロシアニン(ZnPc)/ペリレン誘導体(PTCBI)ヘテロ接合型太陽電池 3.亜鉛フタロシアニン(ZnPc)/C_<60>ヘテロ接合型太陽電池 得られた結論は,どの試料においても内部電場が励起子の解離,すなわちキャリアー生成を引き起こすということである。特にヘテロ接合型太陽電池においては,これまで,キャリアー生成はヘテロ接合を形成する2種類の有機半導体の電子親和力の差によって引き起こされると信じられてきたが,本研究により内部電場がキャリアー生成に最も重要な寄与をすることが明らかになった。さらに,Au/ZnPc界面で筆者がバンドスリップと呼ぶ特異な現象が起こっており,それが内部電場分布,ひいては光起電力特性に大きな影響を与えることを見出した。 ZnPcショットキー接合型太陽電池の内部電場は,逆バイアス領域で通常の空乏層の理論に従うが,順バイアス領域では内部電場が消失した。これはZnPcと電極の界面でバンドスリップが起こる為である。ZnPc/PTCBIヘテロ接合型太陽電池では,PTCBI層の内部電場はバイアス電圧に依らず一定で,光電流との間にも相関がなかった。この電場は,実はPTCBI層のバルク電場ではなく,In電極との界面付近に存在する強い異常電場であることがわかった。ZnPc/C_<60>ヘテロ接合型太陽電池において,C_<60>層の内部電場はPTCBIの場合のような異常を示さずC_<60>バルク層の電場が観測された。ZnPc, C_<60>共に,内部電場と光電流との間に良い相関が見られ,キャリアーは内部電場によって生成されることがわかった。
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