研究概要 |
本研究では難透水性層と透水性層からなる地盤条件下において,難透水性層に鋼矢板を根入れした場合,鋼矢板の根入れ長の変化および矢板内外の水位差の変化が地盤内の汚染物質の拡散抑制性能に及ぼす影響について検討するために,遠心模型実験を行なった.また,解析ソフトGMSを用いて実験と同条件下の移流拡散解析を実施し,実験結果と比較検討を行なった.得られた結論を以下に示す. (1)粘土最上層での矢板外近傍地点において、C/COがある規定値に到達するのに要する時間の根入れ長の増加に対する増加率は、地盤条件によって異なる。根入れ長の増加に対する簡便法による浸透時間の増加率と比較すると、その大小関係はC/COの値に依存し、簡便法による浸透時間計算に基づく設計は基準値となるC/COによって,危険側の評価を与えたり安全側の評価を与えたりするので,根入れ長のみならず基準となる濃度を十分考慮する必要がある. (2)不透水性層下部に透水性層がある場合は,砂層近くまで鋼矢板を貫入させてしまうと,地盤全体においては浸出抑制能が低下する.すなわち,貫入させた矢板の先端が透水層に近づくにつれて,矢板外近傍における透水層では汚染物質の拡散を著しく促進する危険性がある. (3)根入れ長を増加させることにより,矢板内での汚染物質の封じ込め効果は大きくなるが,透水性層近くまで根入れさせると,透水性層が汚染物質の拡散を助長する役割を果たす可能性があることが実験より示された. (4)塩化物含有量試験の結果,模擬汚水が面的な広がりを有していることが明らかとなった.従って,旧運輸省港湾局監修の「管理型廃棄物護岸設計・施工・管理マニュアル」に記載されている設計基準では、現在考慮されている浸透路長のみならず,汚染水をフラックスで考慮する必要がある. (5)GMSによる移流分散解析の結果,実験と同様に矢板内での汚染物質の封じ込め効果が確認できた.また,粘土地盤の透水係数を水平方向に大きくすることにより,実験値との整合性が高くなったことから,模型地盤において,水平方向の透水係数が大きいと十分考えられる.
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