配分額 *注記 |
3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
2005年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2004年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2003年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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研究概要 |
1.本研究では,先ず,以前に真空蒸着法で作製したFe-NiおよびAu-Cd合金ナノ粒子のマルテンサイト変態についての実験で得た知見を熱力学的に考察した。Fe-Ni系では母相とマルテンサイト相の熱力学的平衡温度T_0温度に大きな差はなく,これに対して,Au-Cd系ではT_0温度が大きく低下する。このような相異が生じる熱力学的条件を提示した。すなわち,Au-Cd系では(Δs^<P→M>)_<buik><(Δs^<P→M>)_<particle>のとき,Fe-Ni系では,(Δs^<P→M>)_<bulk>【approximately equal】(Δs^<P→M>)_<particle>で,かっ,(Δh^<P→M>)_<bulk>【approximately equal】(Δh^<P→M>)_<particle>である。ここで,Δh^<P→M>,Δh^<P→M>はそれぞれ母相からマルテンサイト相へ変態する際のエントロピー,エンタルピーの変化量である。 2.通常の物理的方法では作製が困難な単分散粒径分布をもつ合金ナノ粒子集合体が573K以下の低温で化学的に合成できることを示したSunら(Science,2000)の手法により,専ら,Fe-x at.%Pt(x≦25)の低Pt濃度合金ナノ粒子の作製を試みた。はじめ,金属の原材料としてFe(CO)_5とPt(acac)_2を用い,次の段階として,有毒なFe(CO)_5の代わりにFe(acac)_3を用いた。作製試料の室温における構造と加熱・冷却時の相変化は通常の透過電子顕微鏡(CTEM)観察および電子回折により調べた。また,高分解能透過電顕(HRTEM)観察により微粒子の相と微細構造を,そして,薄膜EDX分光器付高分解能分析電顕により微粒子の平均組成を調べた。 (1)合成したままの試料はナノメータサイズ域の比較的大きさの揃った粒状の生成物からなる。しかし,その生成物は配合組成をもつ合金ナノ粒子ではなく,例外なく,ほとんど純白金に近いPt-rich γ相Pt-Fe合金と鉄酸化物(マグネタイト:Fe_30_4)の混合であった。マグネタイトの相対量は白金錯体に対する鉄錯体のモル比が大きい試料ほど多い。 (2)1073Kまでの電顕内加熱により鉄と白金の合金化が進行し,加熱後の室温では,配合組成近傍の組成をもつFe-rich γ相単相の合金粒子あるいはFe-rich αとγ相合金粒子の混合となる。この加熱処理により,合金粒子の平均粒径は約15nmに増大する。 (3)かくして生成したγ相合金ナノ粒子は10at.%Pt以下の低Pt濃度組成でも室温までの冷却で変態せず,さらに103Kに冷却してもマルテンサイト変態を起こさない。 (4)したがって,Fe-Pt合金ナノ粒子のM_3温度は低Pt濃度ではバルクと比べて500K以上低下し,ナノ粒子においてγ相が異常に安定化することが実験的に明らかになった。
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