研究概要 |
本研究の目的は,これまでに開発した手法を用いて,ストレスホルモンあるいは内分泌撹乱物質の神経組織および細胞内情報伝達への影響を調べることである。 まず,4週齢のラットから摘出した海馬切片は摘出後,倒立型共焦点顕微鏡に設置された人工脳脊髄液(ACSF)が潅流され35℃に保たれたチェンバー内に移した。そして,上方から刺激および細胞外記録電極をCA1領域に刺入し,EPSPを確認する。このような電気生理学的な手法ならびに,電位依存性染色による二次元画像の記録手法を確立し発表した(2003 Hosokawa et al.)。 また,PC12細胞の培養液中に異なった濃度の各種ホルモン(Nonylphenol,糖質コルチコイド)を加え,血清を抜いた培養液に交換してアポトーシスを発生させ,その発生頻度をDNAのラダーパターンと,TUNEL(TdT-mediated dUTP-biotin nick end labeling)法により検討した。また,これらの作用をアポトーシスの機序の面から確認するために,アポトーシスを亢進する因子としてBad, Baxを抑制する因子として.Bcl-2の活性を測定した。これらの実験の結果,Nonylphenol投与では100ng/ml以下でもアポトーシスを亢進することが認められた(2004 Aoki et al.)。一方,糖質コルチコイドは100nMから10μMの濃度範囲でPC12細胞の培養液に投与したところ,濃度上昇に伴いアポトーシスを抑制することが示唆された。また,その関連因子であるBaxやBcl-2も変動する傾向が示された。これらの関連因子はBcl-2遺伝子によるミトコンドリア内アポトーシス関連機能に含まれるものであり,微量なコルチゾールがこの遺伝子系に影響を与えることが考えられた。
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