研究概要 |
プロバイオティクスは,宿主の消化管内菌叢のバランスを改善することにより宿主に有益な作用をもたらす生菌を食品に添加したもの,という定義が用いられている.プロバイオティクスが感染症の予防や病態の改善にどれだけ寄与することができるかどうかについてはまだ不明の点が多いため,私達は実際に市販されている食品に応用されているビフィズス菌株(Bifidobacterium longum BB536株)を用いて,マウスの敗血症モデルで検討を行った.緑膿菌を腸管内に定着させたマウスにサイクロホスファマイドを投与し免疫抑制状態とすると、腸管内に定着した緑膿菌がtranslocationを起こして肝臓および腸間膜リンパ節に到達し,さらに全身性に菌が巡り敗血症が惹起された。B.longum BB536,あるいはB.breve ATCC15700の懸濁液を経口ゾンデにより1日1回,10日間投与したところ,B.longum BB536投与群はB.breve投与群に比べて有意に高い生存率を示した.肝臓および血液内の菌数はB.longum BB536投与群で有意に低下していた.腸管内の緑膿菌数を調べると,上部消化管,特に空腸でBB536投与群において緑膿菌数の有意な低下を認めた.さらにin vitroで,腸管上皮細胞であるCaco-2細胞への両菌の付着を検討した結果,B.longumはB.breveより明らかに細胞への高い付着能を示し,さらにその後に添加した緑膿菌の付着を優位に抑制した.これらの結果から,B.longum BB536は腸管上皮への優れた付着性を示し,さらに緑膿菌の定着を抑制することで,腸管由来の緑膿菌性敗血症に対する防御効果を有することが示唆された.
|