研究課題
若手研究(A)
オーステナイト系ステンレス鋼を対象として、応力腐食割れ耐性に優れた組織を作製すると共に、溶接部の熱時効脆化に及ぼす組織異方性の影響を検討した。高周波誘導加熱により融点近傍まで昇温した後に急冷することで、粒界のみが優先的に溶融・凝固して島状δ相が分布した316Lステンレス鋼を作製した。加えて、当該試料が高温水中SCC進展抵抗性を有することを明らかにした。熱時効に伴う吸収エネルギーの低下率は概ねフェライト率で整理が可能で、溶接金属と二相ステンレス鋳鋼の間に大きな違いが無いことを明らかにした。すなわち、溶接金属の熱時効脆化について、2相ステンレス鋳鋼の知見が活用可能であることが示された。
軽水炉のより一層の信頼性向上には、経年劣化事象とその対応技術に関する継続的な研究開発が不可欠である。特にステンレス鋼溶接部においては、従来多くの劣化事象が顕在化していることから、健全性担保の観点から最も重要な対象の一つである。本研究ではステンレス鋼溶接部の主要な劣化モードである応力腐食割れに対して、有効な解決策となり得る金属組織が作製可能であることを示した。加えて、これまで全く検討されてこなかった溶接部の熱時効脆化に及ぼす組織異方性の影響について、少なくとも衝撃値に関しては影響が大きくないことを示した。したがって本研究成果は、軽水炉におけるステンレス鋼溶接部の信頼性向上に資すると判断できる。
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