本研究課題は,市民の価値観を含む文化的サービスを指標とした都市の緑地評価・計画手法を明らかにするとともに体系化することを目指したものである。2年目である本年は,下記の研究成果の発表と論文執筆を主に行った。
全国の市民を対象に実施したオンラインアンケートの結果を「Trend of the Public’s Evaluation of Ecosystem Services by WTP from a National Survey in Japan」のタイトルで国際会議「A Community on Ecosystem Services 2016」(アメリカ フロリダ州)で口頭発表した。生態系サービスに関する活動に対する助成金の分配に関するデータについてクラスター分析を行った結果,助成先の選択方法が10パターンに分かれることを発表した。全てのパターンで共通して「地域の自然災害の防止(土砂崩れ,洪水,津波)を目指す活動」に多くの金額が配分された。
研究の対象地として埼玉県鶴ヶ島市を選定して2015年5月に住民を対象に実施したアンケートの結果を論文「都市近郊における緑地の立地特性と住民の緑地保全活動への参加意欲の程度の関係」にまとめ,『ランドスケープ研究』にて論文が採用された。3つの仮説検証の結果,一定以上の空間面積を持つ緑地の場合で,居所からの距離によって参加意欲の程度が変化すると結論付けた。本研究の成果では,緑地の種類や,従来の地域環境か都市化した地域なのかといった緑地の周辺状況は参加意欲の程度と関係が見られないと結論付けた。この研究成果を発展させて,千葉県市川市の住民を対象にアンケート調査を実施している。
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