研究課題
基盤研究(C)
嗅覚刺激により誘導される行動が振動刺激で強化されるなど,入力感覚器の異なる感覚情報の統合利用システムを昆虫を用いて解析した。特定外来生物クビアカツヤカミキリのオスが放出する性・集合フェロモン成分を同定した後,この揮発成分が誘導する雌雄の飛翔定位が視覚要因、また非虫体由来揮発物質によって強化されることなどを明らかにした。また異性, 外敵モデルとして視覚,振動,嗅覚刺激を単独・複合で提示し,これに対する行動反応を様々な種で評価した結果,行動誘導に機能する各感覚情報が,刺激受容者の環境,生理条件により異なることが示された。本研究成果の適用により環境負荷が低くかつ効果的な害虫制御法の開発が期待できる。
昆虫の中枢神経での情報処理メカニズムの研究が進められている。本研究で得た成果が脳・神経生理学的研究の標的,注目すべき行動指標候補の新規発掘につながる可能性がある。また昆虫は,多種感覚情報利用により環境に応じた行動遂行を可能にする情報処理システムを実装したモデルであるといえる。認知科学,ロボティクス,医療工学など関連分野との連携による今後の研究進展も考えられる。一方,昆虫の情報利用システムに関する本研究成果は,効果的で環境負荷の低い害虫防除法開発に役立つ。クビアカツヤカミキリにおける知見の一部はすでに他の研究機関においても試用されており,この侵入種の動態把握,拡散阻止への寄与が期待される。
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