研究概要 |
AMPA型グルタミン酸受容体はGluR1,GluR2,GluR3,GluR4の4つのサブユニットからなり、GluR2を欠くAMPA受容体は高いCa^<2+>透過性を示す。Jackson研究所より導入したAMPA型グルタミン酸受容体サブユニットのGluR2(遺伝子名GRIA2)欠損マウスを用いて、GluR2のグリア細胞およびニューロンの突起形成における役割を調べた。2004年に導入したGluR2のノックアウトマウスは群馬大学動物実験施設において繁殖をはじめたが、ノックアウトマウスは繁殖性が低く、実験に供する動物が得られたのは2007年になった。 片側のアリルのGRIA2の11番エクソンをネオマイシン耐性遺伝子に置換したメスマウスとオスマウスを掛け合わせ、妊娠16.5日目(膣栓が確認された日を妊娠0.5日目としてする)に、メスマウスを頸椎脱臼により安楽死させた。海馬を採取した後、大脳皮質の一部より染色体DNAを抽出し、PCRを行い、電気泳動により染色体の遺伝子型を調べ、両アリルにGRIA2をもつ野生型と両側のGRIA2を欠くノックアウトマウスの海馬初代培養を作製した。 培養したニューロンの神経突起は大きな違いが見られた。GluR2ノックアウトマウスの樹状突起分岐の数がGRIA2KOで明らかに劣る。また、神経突起が細かった。GRIA2では網目状に密生する神経突起のネットワークが形成されない。またグルタミン酸作動性ニューロンの樹状突起の棘が野生型に比べ小さかった。 本研究では、マウスの繁殖が思い通りに進まず、ノックアウトマウスから海馬細胞が得られたのが、所定の研究期間が終わった後であり、解析は十分でなく、免疫組織化学による細胞種の同定や電気生理学的機能の測定、さらにはグリア細胞に着目した研究などの課題を残した。
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