研究概要 |
本研究は学校におけるアレルギー予防のための健康教育システムの構築を目指し,その基礎的知見を得ることを目的とした。研究構成内容は,アレルギーに関する疫学的研究および学校におけるアレルギーの取組,対策の実態調査研究である。Goshiki Health Study(五色町児童生徒健康実態調査)の一環として行った,15年間のアレルギーに関する疫学的研究から,一般の児童生徒において,自分自身のアレルギーに関する健康状態の指標として,非侵襲的,確認・記録の容易さなどの条件を満たす,個人あたりの既往した疾患(アトピー性皮膚炎,鼻炎,結膜炎,ぜん息)の種数(0-4)を用いることを支持した。さらに,この指標を得るためには,児童生徒が自分自身の健康,育成歴に関心をもち,アレルギーに関しての意識,認識を高めておく必要があるものと考えた。この結果を踏まえ,主としてアレルギーに対する一次予防の視点からの取組,対策に関して,小学校および中学校(分析対象校,計114校)の集団的(一次予防的)対処の取組の実態を調査,検討した。アレルギー対策はほとんどの学校において現実的なアレルギー疾患児童生徒への個別対処で占められている実態が把握できた。逆に,一次予防の視点からの,すなわち予防を目的とした集団的対処,特に健康教育面の対策はほとんど行われておらず,また,同視点からの重要性も認識されていないことがうかがえた。以上,本研究結果から,アレルギー予防のための有効な健康教育を行うためには,あるいは有効な健康教育の内容として,学校サイドおよび児童生徒自身に,アレルギー性疾患の発症に関してだけでなく,健康状態の経過的観察(モニタリング)など予防の段階について,関心を持たせることが重要であると考えられた。
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