研究課題/領域番号 |
16520268
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
言語学
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
高橋 秀彰 関西大学, 外国語教育研究機構, 教授 (60296944)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2006年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2005年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2004年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
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キーワード | EU公用語 / 言語コーパス政策 / 言語ステータス政策 / 多言語主義 / 言語ステータス政 / ステータス計画 / コーパス計画 / 記述主義 / 規範主義 / 言語規範 / ドイツ語 / 言語政策 / 標準変種 / オーストリアのドイツ語 |
研究概要 |
国家の権能を吸収しながらも国家を単位とした公用語政策をとるEUの中で、言語ばかりでなく言語変種(language variety)までもが言語政策の対象になっている。オーストリアは1995年にEUに加盟するにあたって、既にドイツ語がEU公用語であったにもかかわらずProtocol No. 10により23語のオーストリア変異形を承認させることに成功した。言語変種によって国家のアイデンティティー確立を志向するオーストリアが、自らの変種を国際法に則ってEU公用語に組み入れさせたことは言語政策上特筆すべきことである。ドイツはドイツ語の多様性は認めながらも、言語政策上はドイツ語の収束(convergence)を求める形で規範策定に取り組んできた。他方、オーストリアによるProtocol No. 10はドイツ語の複数中心地性に依拠して規範の分散(divergece)を志向するものである。人口、経済などの尺度で弱い立場にある変種国であるオーストリアは多様性を主張し、強い立場にある変種国たるドイツは統一性を求めるという相反する志向性がせめぎ合うという状況がEUにおけるドイツ語の言語政策を特徴付けている。多変種主義は、多様な変種を保護するという意味で民主的な言語コーパス政策を展開できるが、言語ステータス政策レベルでは規範の分散により負の効果をもたらすと言える。加盟国平等の原則に基づき、加盟国の全公用語(複数ある場合は1言語)をEU公用語とする言語政策に実効性を持たせるのは現実的ではない。現実には限られた言語を作業言語として使用されており、そこでは大言語(英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語など)間の勢力争いが繰り広げられている。ドイツ語共同体としてのアイデンティティが国家のアイデンティティを凌駕しない限り、多変種主義は保持され、ドイツ語圏の統一的な言語ステータス政策の展開は容易ではない。
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