研究概要 |
1.国内9家系14症例の経験を基にPCS(染色分体早期解離)症候群(OMIM#176430)を確立し,本症は,M期紡錘体形成チェックポイント障害(BubR1タンパクの発現低下)に起因する染色体不安定性を伴う高発がん性の遺伝形質であることを認めた. 2.PCSの出現頻度は本症の確定診断の重要な指標となるため,その検出至適条件を検討した:標本作製時の低張液処理条件は37℃20分間であること,20分以上の処理では健常者の標本にもPCSが出現すること,PCSは低張液処理によって検出可能となること,などが判った. 3.PCS患児2例に発生した腫瘍(ウィルムス腫瘍2例,横紋筋肉腫1例)の染色体および多型性DNAマーカーを解析した結果.どの腫瘍でも特異的に11番染色体が父方ダイソミー(UPD)であることを認めた.したがって,本疾患では体細胞における高頻度な染色体不分離現象(ある染色体の増加につづく消失)が、UPD発生の素地であることが示唆され,研究目標で設定した仮説「PCS関連の腫瘍は片親アレル発現遺伝子の重複による」が適正であることが裏付けられた。 4.本邦のPCS7家系のBUB1B(BubR1タンパクの遺伝子)を解析して,いずれのPCSの症例にもBUB1Bの突然変異を同定し得た:一塩基欠失が4家系に,3家系のそれぞれにスプライス変異、ナンセンス変異、ミセンス変異。ただし症例における1対の遺伝子のうち変異遺伝子は片方のみで,対立遺伝子は変異を検出しないがBubR1タンパク発現が低下している複合ヘテロ接合体であった。 発現低下した遺伝子のハプロタイプの解析を進めている.
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