研究課題/領域番号 |
16652014
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研究種目 |
萌芽研究
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
日本文学
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
根岸 泰子 岐阜大学, 教育学部, 教授 (20180698)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2005
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研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
2005年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2004年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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キーワード | 女性文学 / 水野仙子 / 自然主義メディア / 近現代日本文学 / 女性作家 / ジェンダー / 『文章世界』 |
研究概要 |
女性職業作家という概念の成立過程について、当該期の文学における女性表象と女性作家・職業作家としての経済的自立と女性規範という二つの関係項を導入し、明治末から大正期、(成立期)の自然主義作家水野仙子の分析を行うとともに、昭和戦前期(展開期)のメディア「ウーマン・カレント」および佐多稲子(窪川いね子)を対象として調査・考察した。 水野仙子についてはメディア戦略・読者層・既成作家との師弟関係を念頭に仙子のテクストを分析、仙子が「文章世界」という男性ジェンダーメディアと「女子文壇」「女学世界」という女性ジェンダーメディアの双方に身を置きつつ、男性メディア雑誌での同時期の岡田美知代、石川君子、田村俊子らと異なり、作中人物の心中思惟と語り手の平面描写を併用する手法-のちに師の田山花袋が立体描写として提唱-によって、女性ジェンダー的モチーフを非女性ジェンダ-文体(口語文体)によって処理する独自の位置を獲得したことを明らかにした。反面でこの描法には女性表象を静止的な鑑賞(叙情性、センティメント)の枠内にとどめようとする力学が潜在するが、本研究では仙子が女性雑誌において、女性領域化しつつあった擬古文体をヴァナキュラー・ジェンダー性の表象形式として明らかに意図的に用いていることを指摘した。これは自然主義文学規範に対する仙子の女性性の側からの反逆とみなせる点で、女性性と文学の相互性についての新知見といえる。 昭和期についてはブルジョワ文学雑誌メディア(「ウーマン・カレント」)およびプロレタリア文学にわける窪川いね子(佐多稲子)をとりあげ、女性解放的な問題意識の共通項を探った。とくに後者の女性表象とセクシュアリティの独自性が同時代文学や時評にほとんど反映していない点、転向期の反戦的なモチーフのテクストが自然主義的な女性表象のモードを採用している点に着目している。
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