基礎資料の収集(テクストの閲覧と収集-複写-)および、研究の方法論をさらに補強するための文献の周辺データの蓄積(読者論・受容論、女性史、女性雑誌に関する研究会等へのアクセス)を行った。具体的には以下のとおりである。 (1)指標となる女性作家水野仙子の全初出テクストの複写・収集(一部調査中のものを除く)。 (2)明治40年代から大正初期における雑誌投稿家と選者との関係性の調査。具体的には同時期の『文章世界』の傾向性の分析(投稿小説と選評の関係性・女性執筆者の選定とテーマ・教育者等の文章指導におけるジェンダー偏差の各項目)。 (3)文学志望者におけるジェンダー偏差検出のための、(2)と同時期の『女子文壇』(設備備品)の比較調査・分析。 (4)女性文学志望者の男性作家への師事の状況の調査。二葉亭四迷と物集和(大倉・子)、夏目漱石と野上彌生子にひきつづき、現時点では幸田露伴と田村俊子、徳田秋声と尾島菊子について調査中。 (5)同時期の男性作家のジェンダーと文学観の分析。本研究では田山花袋(水野仙子の師)におけるモーパッサン受容と翻訳出版事情(発禁状況)をとりあげ調査中。とくにフランス写実主義小説におけるジェンダー観を明治期の男性作家がどのように受容しえたかを中心とする。
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