研究概要 |
多期間ポートフォリオ問題の理論的研究および近接点を用いた数値解法に関する研究を平成16年度に引き続き行った. 理論的研究では,平成16年度の研究の拡張としてマルチファクターモデルを考え,さらに期中の消費を考慮した問題を考えた.この問題に対するverification theoremを与えることに成功した.今年度では新たな証明法をみつけることができたため,前年度に得られた定理よりもさらに一般的な定理を得ることに成功している.動的計画問題を解く際に制御変数を動かす範囲(許容集合)の定義が重要な役割を果たしていることが分かった.この許容集合をさらに一般化できるかどうかは今後の課題としたい. さらに,ファクターが部分的にしか観測できない場合の問題(部分情報下での問題)に対するverification theoremも証明した.そこでは,観測誤差が大きくなりすぎると,解の存在が保障できなくなるような例を示すこともできた. つぎに近接点法による数値解法の研究では,大規模問題,上村=高橋(2000)が提案したMann型およびHalpern型近接点法を実装することを行った.二項ツリーを使ったシナリオを考えた.実装はMATLABで行ったが,シナリオ数が2^5の5期間問題くらいまでならば普通のPCで扱えることが分かった.それ以上になると,計算時間が非常にかかってしまい解く事ができない.ポイントは,近接点法で用いるペナルティ項にかかる係数(正の実数列)の扱いが難しいことにある.理論的にはこの実数列をだんだんと大きくしていくと,収束が早くなることがしられている.しかし,実際にポートフォリオ問題を扱うと,係数が大きくなった際に最適解への近似列が発散してしまうような現象が見られる.発散しない係数列をいくつか試したが,係数列を一定にしたときと収束の速さはあまり変わらなかった.近接点の適用において,この係数列の定義が本質的に重要であることが本研究で明らかになったので,今後はこの定義についての研究をさらに進めていきたい.
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