研究概要 |
BioMEMS技術と生体組織工学を組み合わせて,ミクロ空間において細胞の生命を維持するバイオプロセスを集積化したマイクロバイオ化学システムの開発が必要であると考え、BioMEMS技術によるバイオプロセスを集積化したマイクロバイオ化学システムの開発と心筋細胞駆動型バイオマイクロアクチュエータの基礎研究に着手してきた。そこで申請者は、心筋細胞を駆動源として、細胞を用いた柔らかいマイクロアクチュエーターを実現できると考え,デバイスの設計及び基礎実験を行ってきた。 今年度は、高分子マイクロ構造体からなるメンブレン部分に接着した心筋細胞が拍動することによって,化学エネルギーだけでマイクロ構造体を駆動させる基礎実験と流体駆動デバイスの試作を行った。今回のディスペンサーの開発で最も重要なのが,心筋細胞の収縮力を効率よくデバイスの駆動力に変換する構造の設計である。2タイプのディスペンサーの駆動原理を考案し試作した。ダイアフラム型は心筋細胞の収縮により,プッシュバーをダイアラム方向に押し,チャンバー部の容積変化により液体を吐出する構造である。チューブ型はチューブ回りを心筋細胞で覆うことで,吐出量を向上させ,心筋細胞の収縮力でチューブを搾り出す構造である。実験では新生仔ラットの心室部分にある心筋細胞を用い,実際に作製したチューブ上に細胞を培養した場合のチューブの様子を観察した。細胞の接着は,組み立て前のチューブ部品を使用し,チューブの変形と動作確認を行った。その結果、培養後心筋細胞の観察を続けたところ,培養4日目〜5日目にかけ,細胞は最も活発に動き,その細胞の拍動によるチューブの最大変位は約29μmであった。本研究では,培養心筋細胞駆動型高機能バイオマイクロアクチュエーターの創成を目指し、心筋細胞を用いた流体駆動デバイスの開発として,構造物の設計,作製,実際の心筋細胞を用いた駆動実験を行った。その結果,これまでにない新しい概念の高機能バイオアクチュエータの基本原理の検証に成功した。
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