研究課題
基盤研究(B)
完新世の地球環境変動に伴って生物源砕屑粒子から構成されるサンゴ礁堆積物の生産量が変化した可能性を探るために,久米島ハテノハマ周辺海域を例に地形学・堆積学・生態学・生理学の研究成果を融合させたサンゴ礁堆積物生産量変動モデルを確立することを目的とした。研究成果を統合すると,現在の州島堆積物の主要構成粒子である有孔虫砂(星砂)は約1500~2000年前に北側の離水サンゴ礁で形成され,潮流や波浪により徐々に南側へ運搬されて州島周辺に堆積したことが明らかとなった。本研究成果は,後期完新世(約2000年前)の相対的海水準低下に伴い堆積物の生産が増加し,州島や砂浜が形成された仮説を支持する。
観光資源やさまざまな生態系サービスを提供するサンゴ礁の海岸や州島が地球温暖化に伴う海面上昇によって将来消失するかという問題に対して,放射性炭素年代の多試料測定により,サンゴ礁堆積物の生産・堆積・運搬に時間軸を入れて議論することを可能にした。また,現在のサンゴ礁海岸は1500年以上前に生産された堆積物によって造られることから,サンゴ礁海岸の保全に長期的な視点が必要であることを明らかにした。さらにサンゴ礁海岸の保全の在り方について,海岸や州島付近の沿岸漂砂の阻害要因を排除するのみならず,その堆積物を供給する周辺海域の堆積物生産,運搬経路,堆積過程を長期的に阻害しないことが重要であることを示唆した。
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