研究課題
若手研究(A)
本研究では世界で最も風化作用が活発なヒマラヤ水系の最下流部の河川水と地下水を調査対象として、Sr、Li、Mg、Ca、O、Hなどの同位体組成を測定し、低地に堆積したヒマラヤ山脈に由来する堆積物においても化学風化が活発に進行しており、削剥が活発な上流部と同様の反応様式であることを示した。河川の各同位体組成は季節変化を示さず、反応が定常状態にある。また地下水深部ではより堆積物のバルク溶解反応が進行する。ベンガル平野の風化様式は気候変動で気温・降雨量が変化した時に溶質フラックスが大きく変化するため、気候変動に対する化学風化のフィードバックを予測するうえで重要である。
ベンガル平野の河川水と地下水の同位体組成から、その溶質が上流の高山地帯からに由来するものではなく、多くは降雨と堆積物が反応することでもたらされたことが判明した。50m以深の地下水では化学組成がケイ酸塩鉱物の溶解反応の影響を多く受ける。本研究地域から海洋にもたらされる各種元素の同位体フラックスは非常に大きいため、長期的な海水の同位体組成に影響を及ぼす。地下水の同位体組成の平均値はガンジス・ブラマプトラ川の平均値と誤差の範囲で一致することから、化学風化が上流部と下流部で一致する定常状態にあることを示した。風化の気候影響を知る上で重要な知見である。
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