研究課題
若手研究(A)
加齢と精神的健康の関連に関しては,若年成人に比べて,高齢者ほど肯定的な情報を優先的に記憶し,高い主観的幸福感を示すことが指摘されてきた。こうした現象は,加齢に伴うポジティビティ効果と呼ばれている。ただし,先行研究では,感情制御が困難になると予想される老年後期固有の問題がほとんど検討されてこなかった。そこで本研究では,「高齢者が老年期に渡っていかに精神的健康を維持するか」を解明することを目指し,実験室実験や縦断調査,更に経験サンプリング法と脳イメージングを併用して,高齢者における主観的幸福感と記憶におけるポジティビティ効果の認知,神経基盤に関する検討を行った。
日本を始め,先進諸国で人口の高齢化が急速に進んでいる。例えば,2018年の日本人の平均寿命は,女性が87歳,男性が81歳で,過去最高を記録している。出生数の減少も重なり,65歳以上の人口が総人口に占める割合は30%近くに及ぶ。高齢者の精神的健康を維持することは,身体的健康を維持し,致死率を低めることも明らかにされており,高齢者の精神的健康をいかに維持・向上させるかは喫緊の課題と言えよう。本研究では,高齢者の感情制御や精神的健康に関わる要因を明らかにすることで,いかに国内外の高齢者の生活の質を高めるかに関する示唆を与えるものである。
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