研究課題
特別研究員奨励費
博士後期課程としての最終年度にあたって,筆頭著者での論文および博士論文の執筆に着手した.本研究では孤立した炭素分子負イオンの冷却過程を解明することを目的としている.ここで,冷却過程とは分子が持つ内部エネルギーの散逸過程を指す.孤立系分子負イオンは電子脱離閾値を超える内部エネルギーを持つと電子脱離によって中性化,閾値以下では振動遷移に伴う赤外線放出または逆内部転換を通して可視光や近赤外線を放出する再帰蛍光放出という速い冷却過程によってイオンのまま冷却される.宇宙空間など孤立した環境下において高温な分子イオンの生存はこれらの競合に左右され,分子科学だけでなく宇宙での分子進化などにも関わる興味深い事象である.報告者は小さな炭素分子負イオンを対象に,これら冷却過程を研究してきた.具体的には,レーザーアブレーション型イオン源で生成された高温な炭素クラスター負イオンを,高真空に保たれた静電型イオン蓄積リング内に閉じ込め,イオンにレーザーを照射することで強制的に加熱した.レーザーの波長(光子エネルギー)や照射するまでの時間を変化させつつ加熱後およびイオン生成から加熱までの冷却を観測することで,幅広いエネルギー範囲での冷却速度測定を可能にした.しかし,理論計算とはふるまいが一致するものの,定量的にはずれが生じていた.本年度では計算モデルに改良を加え,様々な内部エネルギー領域における冷却過程を定量的に説明することに成功し,筆頭著者で論文を投稿した.このモデルは他の系に対しても普遍的に適用できると予想され,分子科学に対する大きな貢献と言える.博士論文ではスウェーデン ストックホルムでの留学を含めて世界の静電型イオン蓄積リングを駆使した研究をまとめ,学位が授与された.
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件)
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