研究成果の概要 |
言語により様々であるとされる味覚語彙について,味覚語彙は恣意的に分割されているのではなく複数の言語に共通した法則性があるという仮説を立て,検証した。その結果,以下の点が明らかになった。例えば中国語や韓国語,タイ語などアジアの言語においては,触覚の表現が多く使用されるなど似通った表現の分布がみられる。他方,スウェーデン語や英語は,より客観的な「一般評価」の表現が多く使用される等,アジアの諸言語とは異なる様態をみせる。またこれらの結果を受け,アジアと非アジアの中間に位置するトルコ語についても調査を行い検証した。以上本研究では,言語と非言語的な領域との関連性について考察し,その一端を明らかにした。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
この研究では,味覚器官の機能の共通性に基づく言語普遍性の一端を明らかにした。具体的には6つの言語を対象とし,慣習化された表現の言語使用の状況をとらえた。この研究での成果は, 各々の言語に入り込んだ物の見方を客観視できる資料となることから,語学教育の現場にも援用できる。なお日本語以外の言語についても味表現の全容を体系的に示した研究はなく,貴重な言語資料となる。普遍性に関する検証は,各言語の表面的な相違や様々な背景の違いの中にある,諸言語に共通した特性を追及するものであるが,この普遍性の理解は,脳の構造や働きに関する理解,ひいては人間の理解とも深く関わっていることから,認知科学の発展にも資する。
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