研究課題
基盤研究(C)
東南アジアの熱帯雨林では、気候変動による強い干ばつの発生が予測されている。しかし、これらが森林樹木へどのような影響を与えるかは不明な点が多い。そこで、低地熱帯雨林樹木に人工的な乾燥実験や高温環境への苗の移動実験を行って、乾燥や高温などストレス耐性を評価した。また熱帯山地林樹木を高温の低地へ移動させ、成長速度や光合成機能を評価した。その結果、乾燥耐性などストレス耐性は樹種による差が大きく、葉の厚さや毛の有無などの形態や、尾根や谷などもともとの生育地との関係があることが分かった。山地林樹種は高温に対し、光合成の最適温度は比較的容易に順化できるが、呼吸の増加により成長が低下することが分かった。
この研究の成果は、将来干ばつが頻発した際の熱帯雨林の樹木の成木と実生の生理生態的な応答や、乾燥ストレスへの順化が可能な閾値の推定に役立つ成果である。また、これまでほとんど分かっていなかった熱帯山地林樹種の光合成や呼吸速度の高温順化能力や成長への影響の定量的な評価につながる。本研究で得られた、光合成や呼吸速度の温度依存性のパラメータや、乾燥に対する光合成や気孔開度の応答特性は、プロセスベースの森林動態や植生モデルに実測値を基にした変数として利用でき、気候変動の影響を考慮した東南アジアの熱帯雨林と熱帯山地林の森林動態・植生変動の予測に貢献できる。
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