研究課題
基盤研究(C)
個体老化における種々の疾患の要因となっている炎症作用の血管内皮細胞への影響について検討すべく、炎症性サイトカインの一つである腫瘍壊死因子(TNFα)の濃度や暴露時間の違いによるガングリオシドの発現と機能について解析した。その結果、種々のガングリオシドの中で、GM1の発現がTNFαの濃度依存的に増加することを明らかにし、インスリンシグナルの低下に関わることを見出した。高濃度のTNFαに暴露した場合には、TNFαを除いてからもGM1の発現に依存したインスリン抵抗性がみられた。本研究では、GM1が制御する血管のインスリン抵抗性の分子機序として新たな知見を得た。
肥満が増加する中年層から高齢層にかけて生体内では炎症が増加し、動脈硬化を始めとする血管疾患の発症、進展に関わると考えられるが、詳しい分子メカニズムは不明である。今回の成果では、in vitroの血管内皮細胞の炎症モデルを構築し、炎症性サイトカインであるTNFαの濃度や作用期間によってGM1の発現性とインスリン抵抗性との関連が明らかにされた。本研究成果は、加齢性疾患としての血管疾患に対するGM1を標的とした新たな治療法や予防法の開発に向けた基礎となりうるものである。
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