研究課題
基盤研究(C)
MHC半合致移植のマウスモデルを用いて、ステロイドを併用したHLA半合致移植が、高いGVL効果をもたらす機序を研究した。デキサメサゾン(Dex)の予防投与は、GVL効果に影響を与えることなく、GVHDを抑制した。ドナーT細胞は、2次リンパ節で抗原刺激を受けて増殖したが、Dexにより完全に抑制された。一方、GVLの場である骨髄では、ドナーT細胞はホメオスタティック増殖により増殖したが、Dexの影響を全く受けなかった。さらに、骨髄で増殖するドナーT細胞は、白血病に対するCTL活性を示した。このように、骨髄とリンパ節でのT細胞の増殖様式の相違が、GVHを伴わないGVL効果をもたらすことが判明した。
HLA半合致移植で高いGVL効果が得られる機序を明らかにすることによって、非寛解期症例にも有効な新しい移植療法の実現が期待され、現在、救命できていない50-60%の治療抵抗性の患者の救命に貢献できるものと考える。HLA半合致移植のGVHDを制御できるということが、現時点で、世界的な造血幹細胞移植の到達地点であるが、本研究では、その先を行き、HLA半合致移植片のアロ免疫の強さに注目し、それを逆手にとり、治療抵抗性血液腫瘍を治そうという新しい発想の研究である。よって、細胞療法の分野で、HLA適合移植からHLA不適合移植への大きなパラダイムシフトをもたらす可能性があると考えている。
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