研究課題
挑戦的萌芽研究
マスト細胞の顆粒中には亜鉛が豊富に含まれていることが報告されており、脱顆粒に伴って細胞外に放出されることが知られている。しかし、その役割とメカニズムについては明らかにされていなかった。そこで、マスト細胞顆粒中へ亜鉛を取り込む機構、そして細胞外に放出された亜鉛の役割解明を目的とした。本研究においてマスト細胞における顆粒内への亜鉛取り込みに関与している分子として亜鉛トランスポーターZnT2の同定に成功した。ZnT2欠損マスト細胞では刺激依存的な放出亜鉛が観察されず、またZnT2KOマウスでは皮膚創傷治癒の遅延が生じた。以上、本研究によりマスト細胞から放出される亜鉛の生理的意義を初めて示した。
亜鉛補充療法が有効な疾患がいくつか知られている。例えば、長期入院患者や在宅で介護を受けている老人においてばしば観察される褥瘡などである。しかしながら、皮膚における創傷治癒において、亜鉛の作用機序に関しては十分に理解されていないのが現状である。今回の研究結果より、マスト細胞からの放出亜鉛が皮膚創傷治癒の炎症相を制御している可能性を示した。以上の知見は、亜鉛を用いた効率の良い治療法の開発や入院患者で問題となっている褥瘡の予防・治療に役立つ可能性が示された。
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