研究課題
若手研究(B)
幹細胞機能の維持に必要な周辺の微小環境のことをニッチといい、生体内の胃腸腺管上皮化には筋線維芽細胞が接着し、幹細胞ニッチとしての重要性が示唆されている。マウス腺胃・腸から間質筋線維芽細胞を単離培養し解析を行い、胃・腸それぞれに発現量の高い因子が同定され、間質筋線維芽細胞にも組織特異性が存在することが示唆された。早期側方発育型大腸腫瘍の臨床検体を用いた検討から、異所性の胃型・腸型形質発現、内分泌細胞分化、SOX2発現が肉眼型や組織異型度に関連して異なり、これらが悪性化・粘膜下層浸潤の予測マーカーとなり得ることを見出した。
正常状態のみならず発癌プロセスにおいて細胞外環境が消化管幹細胞の挙動に及ぼす影響や幹細胞の可塑性がどう媒介されるかは未解明な点が多い。本研究で胃腸腺管におけるニッチとしての筋線維芽細胞にも組織特異性の存在が示唆され、消化管上皮の組織恒常性維持機構、発癌のメカニズムの解明にもつながるものである。異所性の胃型・腸型形質発現，内分泌細胞分化，SOX2発現が側方発育型大腸腫瘍の早期の発癌・進展過程における悪性化・粘膜下層浸潤の予測マーカーとなり得ることを見出したが、癌幹細胞の胃型・腸型発現の制御機構には類似点が多いと考えられ、癌細胞における新たな治療戦略の礎になるものと考えられる。
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Clin Colorectal Cancer.
巻: - 号: 2 ページ: 141-146
10.1016/j.clcc.2016.09.009
