研究課題
若手研究(B)
食道静脈瘤治療時に独自の方法でヒト門脈血を直接採取し、門脈血液内に迷入する腸内細菌種と肝疾患形成の関連性を検討した。門脈血と同一症例の糞便を用い、細菌16S rDNA ライブラリーを作成し次世代シークエンス(NGS)解析を行った。糞便細菌叢のNGS結果では、代謝性肝疾患ではバクテロイデス門の割合が減少し、ファーミキューテス門とプロテオバクテリア門の割合が増加していた。門脈血のNGS解析では、食道内常在菌であるProteobacteria門が検出されるため、サンプル採取時のコンタミを否定するため無菌的カテーテル操作による門脈血液採取を行い、門脈血液中に確実に細菌DNAが検出されることを確認した。
これまで未開拓であったヒト門脈血を独自方法で採取し解析した研究であり、今後増加が危惧されるアルコール性脂肪肝や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の病態進展の因子同定など、学術的意味は計り知れないものがある。今回得られた結果を基に、体内の閉鎖的循環系である門脈血への細菌迷入がさらに立証されると、従来の概念を覆す「腸内細菌叢の改善による肝臓病の治療」などに繋がる可能性があり、社会的な意義は大きい。一部の重症な腸疾患では糞便経口摂取による治療が実際に行われており、今後は、肝臓病における腸内環境への介入など、全身疾患として肝臓病を捉える必要性に繋がる可能性がある。
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